共通論点
生成AIを業務で使うときの留意点は試験ごとにどう問われるか(入力と出力)
生成AIサービスを業務で使うときの留意点(機密情報・個人情報の入力、出力の誤り)が、新しいITパスポート試験のサンプル問題とデータマネジメント試験(仮称)のシラバス案でどう扱われているかを比べます。入力と出力の2つの軸で整理しました。
結論:入力の側と出力の側に分けて考える
生成AIサービスを業務で使うときの留意点は、「何を入力するか」と「出力をどう使うか」の2つに分けると整理できます。新ITパスポートのサンプル問題も、この2つを1問の中で問う形になっていました。
| 軸 | 留意点の例 | 根拠になる決まり |
|---|---|---|
| 入力 | 共同研究の相手から受け取った機密情報を入力する | 秘密保持契約(契約) |
| 入力 | 顧客の個人情報を入力する | 個人情報保護法(法律) |
| 入力 | 社外秘や、利用条件でAI学習を禁じられたデータを入力する | 社内のガイドライン、データの利用条件 |
| 出力 | もっともらしい誤り(ハルシネーション)をそのまま使う | 情報倫理・AI倫理 |
| 出力 | 偏った判断や差別的な表現をそのまま使う | 情報倫理・AI倫理 |
ITパスポート:3つの分野の知識を、1つの場面で問う
ITパスポートのサンプル問4は、A社がインターネット上の生成AIサービスを事業で使う場面で、次の3つの記述がどれも適切かを問いました。答えは「a,b,c」の全部です。
- aは、秘密保持契約を結んだ共同研究の機密情報を入力すると、契約に抵触するおそれがある、という入力の留意点です。
- bは、顧客の個人情報を入力すると第三者提供に該当するおそれがある、という入力の留意点です。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反する可能性があるとしています。
- cは、生成AIで集めた情報に誤りが含まれるおそれがある、という出力の留意点です。
シラバス案(Ver.0.1)では、この3つは別々の分野にあります。ハルシネーションなどの「AI のリスク・脅威」は情報倫理・AI倫理、守秘契約(NDA)はビジネス関連法規、第三者提供はプライバシー関連法規です。ITパスポートでは、分野をまたいだ知識を、1つの業務の場面にまとめて問う形になることがあります。
DM:データを扱う実務者として、ルールを守り、問題を報告する
データマネジメント試験(仮称)のシラバス案(Ver.0.1)は、科目Bに「1-5. AI 活用におけるデータ利用上の留意事項への対応」という項目を置いています。目標とする技能の例として、次のようなものが挙がっています。
- 機密情報、個人に関する情報、契約上利用制限のある情報のプロンプト入力などによる情報漏えいを避けるために、AI利用に関する組織内のガイドラインを遵守する。
- 著作権・知的財産権の利用上の留意事項を確認し、プライバシー配慮や、差別・偏った判断を防ぐ倫理的配慮についての組織のルールを守る。
- AI利用時の情報漏えいや不適切な利用、利用制限違反を見つけたときに、関係部門に報告・相談する。
また、科目Bの「1-3」の項目では、データの利用条件の例として「AI学習可否」が挙げられています。ITパスポートが「何が問題になりうるか」を知っているかを問うのに対して、DMは、データの利用条件を確かめ、組織のルールに沿って扱い、問題を見つけたら報告する、という実務の行動まで求めています。サンプル問題では、この項目の問題はまだ公表されていません(2026年10月2日の時点)。
学ぶ順番:分野ごとの知識 → 入力と出力の整理 → 組織での行動
学ぶ順番
ITパスポートの段階では、ハルシネーション、秘密保持契約、第三者提供の3つを、それぞれの分野で言葉として押さえ、それを「入力」と「出力」の表に並べ直せれば十分です。
DMを受けるなら、そこに「データの利用条件(機密区分、第三者提供の可否、AI学習の可否)を確かめてから入力する」「問題を見つけたら誰に報告するか」を加えます。シラバス案の報告先は「関係部門」ですが、当サイトの見方では、データの持ち主(データオーナー)に報告する点で、DMの科目Bのサンプル問1(責任の所在)と考え方が共通しています。
参考にした資料
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(確認)
個人情報保護委員会(確認)