データマネジメント試験

データマネジメント試験(仮称)科目Bサンプル問1(責任の所在)の解説

データマネジメント試験(仮称)の科目Bサンプル問1を、スマホで解いて確かめられます。データ活用ルールの4つの条文を、報告・暫定対応・恒久対策・カタログ更新の4つの場面に当てはめて、空欄a〜dの責任部門を決める手順と、選択肢ごとの根拠を解説します。

データマネジメント試験

科目Bサンプル問題 問1

IPA 公表問題

先に設問を確認

設問 表 3 中の【 a 】~【 d 】に入れる字句の組合せはどれか。解答群のうち,適切なものを選べ。

設問と解答群へ移動

A 社は,事務機器・オフィス用品販売会社である。データドリブン経営を推進するために,全社のデータを集約したデータ基盤を構築し,各部門による自律的なデータ活用を推進している。その実現のために,A 社では,“データは生成した部門の資産であり,同時に全社の資産でもある”という考えの下,表 1 のデータ活用ルールを定めている。

表 1 データ活用ルール
No.ルール名内容
1データオーナーシップ・業務システムなどで最初にデータを生成した部門をデータオーナーとする。
・値の加工を行わずにデータを連携・活用する場合,データ基盤上でもデータを生成した部門が,品質・意味に対する責任を負う。
2派生データの責任・データ基盤のデータに対して,値の変換,クレンジング,統合などの加工を行って新たなデータを生成した場合,又は独自の修正を加えてレポートを作成した場合,実施した部門が成果物である当該データのデータオーナーとなり,その品質や内容に対する責任を負う。
3カタログの管理責任・データカタログシステムの稼働維持はデータ基盤チームが行う。
・各データの意味の記述内容の登録・更新・削除は,各データのデータオーナーが行う。
4品質保証の原則・データの活用者は,活用するデータの品質に疑義がある場合,データカタログを参照し,データオーナーに問合せや改善要望を行う。

A 社のマーケティング部の B さんは,来期のキャンペーン戦略立案のために,データ基盤にあるデータで分析することを考え,データカタログを検索した。分析対象とするデータ項目に関する情報を表 2 に示す。

表 2 分析対象とするデータ項目に関する情報(当サイトで行と列を入れ替えた)
データ項目名商談確度名寄せ後取引先名
連携元部門営業部営業部
データ基盤での加工仕様なし。あり。ルールベース処理で表記を統一。
意味S:受注目前
A:提案中
分析用に表記ゆれを吸収した取引先名称

B さんは,商談確度のデータを確認したところ,データカタログの意味にはない“C”や“引合中”といった値が多数存在し,一部のデータが未入力であることも判明した。

このままでは正確な分析ができず,キャンペーンのターゲット選定を誤るリスクがある。そこで,B さんは,A 社のデータ活用ルールに照らして,表 3 に示す四つのアクションを計画し,品質改善と責任の所在を明確にすることにした。

表 3 品質改善アクションプラン
アクション内容
1意味欄に該当しない値,未入力などのデータ品質の問題を,【 a 】に報告する。
2恒久対策には時間が掛かることから,来週の戦略会議に間に合わせる目的で,B さんがやむを得ず,分析用データに対して独自の修正ルールを適用してレポートを作成する。この場合,レポートの数値に関する説明責任は【 b 】が負う。
3今後,意味欄に該当しない値が発生しないよう,【 c 】が業務ルールの徹底などの恒久対策を主導する。
4データの実態と意味欄の登録内容がかい離していることから,データカタログの意味欄を正しい状態に【 d 】が更新する。

設問 表 3 中の【 a 】~【 d 】に入れる字句の組合せはどれか。解答群のうち,適切なものを選べ。

解答群
答えと選択肢ごとの根拠を見る

正解:ウ(a 営業部/b マーケティング部/c 営業部/d 営業部) IPA 公表の解答例による

  • ア × 誤り 派生データの責任(ルール2)を見落とした

    a 営業部/b 営業部/c 営業部/d 営業部

    a・c・dは正しい。しかしbは,Bさんが分析用データに独自の修正ルールを適用してレポートを作っている。ルール2では,独自の修正を加えてレポートを作成した場合,実施した部門がその成果物のデータオーナーになる。元のデータが営業部のものでも,レポートの数値の説明責任はマーケティング部にある。

  • イ × 誤り データ基盤チームが中身の品質も管理すると考えた

    a 営業部/b 営業部/c データ基盤チーム/d データ基盤チーム

    aだけが正しい。bは独自の修正を加えたBさんの部門(マーケティング部)が負う(ルール2)。c・dのデータ基盤チームは,ルール3でデータカタログシステムの稼働維持を担うだけで,データの品質や意味の記述には責任を持たない。

  • ウ ○ 正しい

    a 営業部/b マーケティング部/c 営業部/d 営業部

    商談確度は営業部が生成し,加工なしで連携されている(表2)ので,ルール1でデータオーナーは営業部。品質の問題は活用者からデータオーナーに報告する(ルール4。a)。独自の修正を加えたレポートは,実施したマーケティング部が責任を負う(ルール2。b)。値の発生源の業務ルールを直すのは,データを生成した営業部(ルール1。c)。意味欄の登録・更新はデータオーナーの営業部が行う(ルール3。d)。

  • エ × 誤り カタログの「システムの管理」と「記述内容の管理」を混同した

    a 営業部/b マーケティング部/c 営業部/d データ基盤チーム

    a・b・cは正しい。dのデータカタログの意味欄の更新は,ルール3の後半で「各データのデータオーナーが行う」とされている。データ基盤チームの担当は,前半のデータカタログシステムの稼働維持だけ。

  • オ × 誤り データ基盤チームが中身の品質も管理すると考えた

    a 営業部/b マーケティング部/c データ基盤チーム/d 営業部

    a・b・dは正しい。cの恒久対策は,意味欄にない値を入力している業務の側を直すもの。値の加工なしで連携しているデータは,データ基盤上でも生成した部門(営業部)が品質に責任を負う(ルール1)。データ基盤チームは業務ルールを決める立場にない。

  • カ × 誤り データ基盤チームが中身の品質も管理すると考えた

    a 営業部/b マーケティング部/c データ基盤チーム/d データ基盤チーム

    a・bは正しい。cとdをデータ基盤チームにしているのが誤り。品質の恒久対策(c)はデータを生成した営業部(ルール1),意味欄の更新(d)はデータオーナーの営業部(ルール3)が行う。

  • キ × 誤り 品質の問題の報告先をデータ基盤の運営者だと考えた

    a データ基盤チーム/b 営業部/c 営業部/d データ基盤チーム

    cだけが正しい。aの報告先は,ルール4で「データオーナーに問合せや改善要望を行う」とされている。データ基盤に載っているデータでも,報告先は基盤の運営者ではなく,データオーナーの営業部。bはマーケティング部,dは営業部が正しい。

  • ク × 誤り 品質の問題の報告先をデータ基盤の運営者だと考えた

    a データ基盤チーム/b データ基盤チーム/c 営業部/d 営業部

    c・dは正しい。aはデータオーナーの営業部に報告する(ルール4)。bのレポートはBさんの部門が独自の修正を加えて作ったもので,データ基盤チームが説明責任を負う理由はない(ルール2)。

  • ケ × 誤り データ基盤チームが中身の品質も管理すると考えた

    a データ基盤チーム/b マーケティング部/c データ基盤チーム/d データ基盤チーム

    bだけが正しい。a・c・dをすべてデータ基盤チームにしているが,データ基盤チームが担うのはデータカタログシステムの稼働維持だけ(ルール3)。報告・恒久対策・意味欄の更新は,どれもデータオーナーである営業部の役割。

出典:データマネジメント試験(仮称) 科目B サンプル問題 問1独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(掲載)原文を開く(確認)表2(4列)をスマホで読めるよう,データ項目ごとの列に組み直しました(行と列を入れ替えています)。問題文・表・設問・解答群の文言は原文のままです。

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解説

答えはウ:bだけがマーケティング部、残りは営業部

正解はウ(a営業部、bマーケティング部、c営業部、d営業部)です。IPAは出題趣旨で、この問題を「データ品質の問題を発見した際の一連のプロセス(報告,暫定対応,恒久対策,メタデータ管理)」で、ルールに基づいて「各プロセスにおけるデータの責任主体を正しく判断する能力」を問うものとしています。

空欄a〜dは、表3のアクション1〜4にそれぞれ1つずつあります。どのアクションも、表1のどれか1つのルールで責任部門が決まります。知識はほとんど要らず、ルールの条文を場面に当てはめる読解の問題です。

先に決める前提:商談確度のデータオーナーは営業部

4つの空欄を決める前に、問題のデータ(商談確度)のデータオーナーを確定させます。表2では、商談確度の連携元部門は営業部で、データ基盤での加工仕様は「なし。」です。

ルール1は「最初にデータを生成した部門をデータオーナーとする」「値の加工を行わずにデータを連携・活用する場合,データ基盤上でもデータを生成した部門が,品質・意味に対する責任を負う」としています。加工なしで連携されているので、データ基盤の上でも、商談確度の品質と意味の責任は営業部にあります。

ここが決まると、4つの空欄のうち3つは「データオーナーの営業部」で埋まります。名寄せ後取引先名は「加工あり」ですが、Bさんが問題にしたのは商談確度だけなので、この問題では使いません。

4つの場面に、ルールを1つずつ当てはめる

空欄 場面 当てはまるルール 責任部門
a 品質の問題の報告 ルール4(活用者はデータオーナーに問合せ・改善要望) 営業部
b 独自の修正をしたレポート ルール2(独自の修正をした部門が、成果物のデータオーナー) マーケティング部
c 業務ルールの徹底などの恒久対策 ルール1(加工なしのデータは、生成した部門が品質に責任) 営業部
d データカタログの意味欄の更新 ルール3の後半(意味の記述はデータオーナーが登録・更新) 営業部

aは迷いにくい空欄です。ルール4がそのまま「データオーナーに問合せや改善要望を行う」と書いています。

bがこの問題の分かれ目です。アクション2でBさんは「分析用データに対して独自の修正ルールを適用してレポートを作成する」ので、ルール2の「独自の修正を加えてレポートを作成した場合,実施した部門が成果物である当該データのデータオーナーとなり」に当たります。元のデータは営業部のものでも、修正したあとのレポートの数値は、修正したマーケティング部が説明します。解答群9個のうち、bがマーケティング部なのはウ・エ・オ・カ・ケの5つで、ここで候補が約半分になります。

cは、意味欄にない値(“C”や“引合中”)が入力される原因を断つ対策です。値を入力しているのは営業部の業務なので、業務ルールを徹底できるのも営業部です。ルール1で品質の責任を負うのも営業部です。

dは、ルール3の前半と後半を読み分ける空欄です。前半の「データカタログシステムの稼働維持」はデータ基盤チームですが、後半の「各データの意味の記述内容の登録・更新・削除」はデータオーナーが行います。意味欄の更新は後半に当たるので、営業部です。

間違えやすいところ:データ基盤チームに寄せてしまう

誤答の多くは、どこかの空欄を「データ基盤チーム」にしたものです(イ・エ・オ・カ・キ・ク・ケ)。データ基盤に載っているデータの問題なら、基盤の担当に頼めばよい、と考えると選びやすくなります。

しかし表1で、データ基盤チームの名前が出てくるのはルール3の前半の1か所だけで、役割は「データカタログシステムの稼働維持」です。データの中身(品質、意味、業務での入力)については、どのルールもデータ基盤チームに責任を置いていません。A社の考え方は「データは生成した部門の資産」で、基盤は置き場所を提供しているだけです。

もう1つのつまずきは、bを営業部にするもの(ア・イ・キ)です。「元のデータが悪いのだから、データの持ち主が責任を取る」と考えると、こうなります。ルール2は、この考え方とは逆の扱いを定めています。レポートの数値が元データと違う理由を説明できるのは、修正のルールを決めて適用した部門だけです。

時間をかけないコツ:b → d → cの順で絞る

解く時間の目安は5分ほどです(当サイトの推測)。表1を頭から読むより、表3の空欄を見てから、該当するルールだけを探すほうが速く解けます。

  1. bを見る。「独自の修正ルール」という語でルール2を探し、マーケティング部に決める(候補は5つになる)。
  2. dを見る。ルール3の後半で営業部に決める(ウ・オの2つになる)。
  3. cを見る。オはデータ基盤チームなので外れ、ウに決まる。

aは、残ったウもオも営業部なので、最後に確かめるだけで済みます。

実務の目で見ると:暫定対応の責任を、先に決めておく

この問題の状況は、データ基盤を持つ会社でよく起きます。分析の締切があり、元のデータの修正は間に合わないので、使う側が手元で値を読み替えてレポートを作る、という場面です。

ここで責任の所在を決めていないと、あとでレポートの数値が問われたときに、「元データが悪い」(使う側)と「勝手に直された」(持ち主の側)の言い合いになります。ルール2のように、加工した側が成果物の責任を持つと決めておけば、暫定対応をしてよいかを、その場で判断できます。

あわせて、アクション1(報告)とアクション3・4(恒久対策とカタログ更新)を同時に進めている点にも注目してください。暫定対応だけで終わらせると、次の分析でまた同じ読み替えが必要になります。シラバス案(Ver.0.1)の科目Bの項目「1-4. データ品質及びメタデータ整備状況の確認と問題発見時の対応」も、品質問題を見つけたときに、データオーナー・データ主管組織・IT部門ごとの責任範囲を把握して行動するスキルを挙げています。

次に読む

参考にした資料

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(確認)