共通論点
データガバナンスとデータ品質は試験ごとにどう問われるか(サイロ化・表記ゆれ)
データガバナンス、サイロ化、表記ゆれなどのデータ品質の問題が、新しいITパスポート試験とデータマネジメント試験(仮称)のサンプル問題でどう問われているかを比べます。似た「困ったこと」の見分け方と、試験ごとの深さの違いをまとめました。
結論:ITパスポートは「どの問題か」を見分け、DMは「なぜ・どう防ぐか」を判断する
データガバナンスは、データの扱いのルール(品質、セキュリティ、責任の所在)を組織として決め、守られているかを監視する活動です。ルールがないときに起きる「困ったこと」が、サイロ化、表記ゆれ、データの意味が分からないままの蓄積などです。IPAのサンプル問題では、試験によって問われる側が違います。
| サンプル問題 | 問われていること |
|---|---|
| 新ITパスポート 問2 | 4つの「困ったこと」のうち、どれがサイロ化か(用語の区別) |
| DM科目A問1 | データガバナンスが重要である理由(目的) |
| DM科目A問2 | 品質の劣化につながる望ましくない対応はどれか(予防) |
| DM科目B問2 | 2つの顧客データを結べない根本的な課題は何か(ガバナンスの課題の切り分け) |
似た「困ったこと」を、起きる場所で見分ける
ITパスポートのサンプル問2は、4つの選択肢がどれもデータマネジメントの不備で起きる問題になっていて、そのうちサイロ化を選ぶ形でした。起きる場所で分けると、区別しやすくなります。表記ゆれはデータ品質(一貫性)の問題、データスワンプは使えないデータがたまった状態を沼にたとえた言葉です。
| 問題 | 起きる場所 | 例 |
|---|---|---|
| サイロ化 | 部門と部門の間 | 営業と経理が別々に顧客データを持ち、組み合わせられない |
| 表記ゆれ | 1つのデータの中 | 同じ取引先が「株式会社」と「(株)」で別々に入っている |
| データスワンプ | データとその説明の間 | 来歴や意味の説明(メタデータ)がなく、使えないデータがたまる |
| 廃棄の漏れ | 時間の経過 | 保管期限を過ぎたデータが残り、管理の対象が増え続ける |
DMのシラバス案(Ver.0.1)は、データマネジメント・データガバナンスの不備によって生じるリスクとして、データの品質低下、サイロ化、コンプライアンス違反、意思決定の遅れや精度の低下、データスワンプなどを並べています。ITパスポートで用語を区別できれば、DMではこれを前提に「なぜ起きるか」「どう防ぐか」が問われます。
DM科目A:目的と予防を問う
DMの科目Aサンプル問1は、データガバナンスが重要である理由を選ぶ問題で、正解は、データの品質やセキュリティを維持し、意思決定の精度向上や法令遵守などを実現して、組織の価値と信頼を高めるため、という選択肢でした。誤答には、サイロ化を目指す状態として書いたもの、情報システム部によるITコントロールの強化、業務の自動化によるコスト削減が並んでいます。サイロ化は、ITパスポートでは「困ったこと」の名前として、DMでは「ガバナンスが防ぐもの」として登場します。
科目Aサンプル問2は、品質の劣化につながる対応を選ぶ問題で、入力規則やバリデーションを外して担当者の判断に任せる対応が答えでした。表記ゆれは、起きてから直すより、入力の時点で防ぐほうが手間が少なくて済むことが多いと当サイトでは見ています。シラバス案の「データ品質低下の予防措置(データ入力チェック,データ品質ルールの定義及び適用)」に対応する問題です。
DM科目B:表面の問題と、ガバナンスの問題を切り分ける
DMの科目Bサンプル問2では、ECサイトと店舗の顧客データを結合しようとして、電話番号の形式の違い、メールアドレスの未入力、別々に採番された顧客IDという3つの問題が見つかります。正解は、根本の課題を、それぞれで採番した顧客IDが販売チャネル横断の顧客識別子として機能しないこととし、暫定の結合キーに電話番号を使うものでした。
IPAの出題趣旨は、この問題で「表面的な技術課題と,より本質的なガバナンス上の課題を切り分ける能力」を問うとしています。形式の違い(表記ゆれに近い問題)は整形で直せますが、当サイトの見方では、部門ごとに別々のIDで顧客を管理している状態は、サイロ化の典型です。組織として共通の識別子を決めなければ、根本的には解消しにくい問題です。
ITパスポートの問2で区別した「サイロ化」と「データ品質の問題」が、DMの科目Bでは1つの事例の中に同時に出てきて、どちらが根本かを判断させる形になっています。
学ぶ順番:用語の区別 → 目的と予防 → 事例での切り分け
学ぶ順番
ITパスポートの段階では、サイロ化・表記ゆれ・データスワンプ・廃棄の漏れを、起きる場所で区別できれば十分です。DMを受けるなら、それぞれについて「ガバナンスのどのルールがあれば防げたか」を1行で言えるようにしておくと、科目Aの目的や予防の問題にも、科目Bの切り分けの問題にも、同じ知識で対応できます。
参考にした資料
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(確認)