ITパスポート
科目A-1(共通知識)と新しいITパスポート試験の範囲は、どこまで重なるか
PD試験と情報処理安全確保支援士試験の科目A-1(共通知識)と、新しいITパスポート試験は、出題範囲の分類の多くが共通です。2つのシラバス案の用語例を照らし合わせ、そのまま使える部分、科目A-1で深くなる部分、片方にしかない分類をまとめました。
結論:ITパスポートの26分類のうち25分類が科目A-1にもある。深さは別もの
新しいITパスポート試験のシラバス案 Ver.0.1が範囲にする26の中分類のうち、25分類は、PD試験(プロフェッショナルデジタルスキル試験・仮称)と情報処理安全確保支援士試験(SC)の科目A-1(共通知識)のシラバス案 Ver.0.1にもあります。新しい制度では、すべての区分の知識の範囲を共通の30分類で整理しているため、中分類の名前と番号がそろっています(IPA「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」)。
ただし、同じ分類でも用語例はかなり違います。ITパスポートで学んだ語は科目A-1の土台になりますが、科目A-1の用語例の多くはITパスポートにない、一段実務に寄った語です。
| 項目 | 新ITパスポート | 科目A-1 |
|---|---|---|
| 対象の試験 | ITパスポート試験 | PD試験の3区分、SC |
| シラバス案 | Ver.0.1(2026年8月31日掲載) | Ver.0.1(2026年9月30日掲載) |
| 時間・出題数 | 120分・100問 | PD試験90分・60問、SC 45分・30問 |
| 開始時期(予定) | 2027年度春頃 | 2027年度夏頃から秋頃 |
| 中分類の数 | 26 | 29 |
| 重点分野 | 指定なし | セキュリティの4分類 |
| 片方にしかない分類 | マインド・スタンス | 開発・運用の3分類、セキュリティ実装技術・評価 |
時間・出題数と開始時期は、IPAの2026年3月31日の検討状況によります。中分類の数は、当サイトが2つのPDFの見出しを数えたものです。ITパスポートのシラバス案はsyllabus_ip_ver0_1.pdf、科目A-1のシラバス案はsyllabus_pdsc_a-1_ver0_1.pdfで、どちらも新試験制度のシラバス案のページから入手できます。
そのまま使える部分:両方の用語例にある語
データマネジメントの分類では、データライフサイクルの機能が、どちらも「生成、保管、処理、活用、廃棄」の同じ5段階で書かれています。データドリブン経営、データガバナンス、DIKWモデルも共通です。
セキュリティでは、ゼロトラスト、セキュリティバイデザイン、ビジネスメール詐欺(BEC)、ゼロデイ攻撃、ISMAP、PCI DSS、耐量子計算機暗号が両方にあります。AIと倫理では、プロンプトインジェクション、ディープフェイク、ハルシネーション、大規模言語モデル(LLM)とコンテキスト内学習、AI基本法、GDPRが共通です。経営の分類にも、SWOT分析や損益分岐点のように両方に載る語があります。
当サイトの見方では、これらの語をITパスポートの段階で「何を指すか」まで押さえておけば、科目A-1の学習では説明を読み直す時間を減らせます。
科目A-1で深くなる部分:「気付いて報告する」から「対策を選ぶ」へ
同じ分類でも、冒頭の説明の目的が違います。「情報セキュリティの脅威」は、ITパスポートでは、マルウェア感染などの異常に気付いて適切に報告するための基礎知識とされています。科目A-1では、適切な対策を検討・実施する、またはそれを支援するための知識です。「セキュリティ関連法規」も、ITパスポートは不正につながりそうな場面に「気付ける」こと、科目A-1は「指摘できる」ことが目的として書かれています。
用語例の差は、攻撃手法を比べると分かりやすく出ます。ITパスポートの資格情報を狙う攻撃は、総当たり攻撃とパスワードリスト攻撃です。科目A-1には、レインボーテーブル攻撃、クレデンシャルスタッフィング、セッションハイジャックがあり、アプリケーションへの攻撃にもCSRF、SSRF、ディレクトリトラバーサルが加わります。ITパスポートではプロンプトインジェクションが「その他・特殊・高度な攻撃」の1語ですが、科目A-1には「AI システムに対する攻撃」の項目があり、ジェイルブレイクやデータポイズニングと並んでいます。
| 分類 | 新ITパスポートの用語例 | 科目A-1の用語例 |
|---|---|---|
| リスク対応 | リスク回避、リスク共有、リスク保有 | リスクコントロール、リスクファイナンシング、リスク登録簿 |
| 利用者の認証 | 多要素認証、パスキー | FIDO2、WebAuthn、IDaaS |
| 生成AIの利活用 | ランダム性の制御 | ランダム性の制御(Temperature・Top-p・Top-k)、システムプロンプト |
| 生成AIの技術 | LLM、トークン、RAG | 上に加えて、Transformer、RLHF、コンテキストウィンドウ、MCP、A2A |
| 情報倫理・AI倫理 | ハルシネーション、ディープフェイク | 上に加えて、シャドーAI、自動化バイアス、技術者倫理 |
反対に、ITパスポートにあって科目A-1の用語例にない語もあります。多要素認証、パスキー、情報資産台帳、リスク保有、3C分析などです。当サイトの見方では、科目A-1の用語例はITパスポートで扱う基本の語を前提に、その上の段の語を中心に並べているように見えます。ただしIPAはそう明記していません。用語例はあくまで例なので、ITパスポートの基本の語が科目A-1で問われない、とは読まないほうが安全です。
片方にしかない分類:ITパスポートのマインド・スタンスと、科目A-1の開発・運用
マインド・スタンスはITパスポートだけの分類で、科目A-1の範囲にはありません。変化への適応やアジャイルなふるまいを、知識よりも「どう動くか」で問う分類です(ITパスポートのサンプル問1)。ふりかえりの手法のKPTは両方のシラバス案にありますが、ITパスポートではマインド・スタンスの「アジャイルなふるまい」に、科目A-1では開発・運用の方法論の「アジャイル開発」に置かれています。同じ語でも、行動の話として出るか、開発の手法として出るかが違います。
科目A-1だけにあるのは、システムライフサイクルプロセス、開発・運用の方法論、アルゴリズム・プログラミング、セキュリティ実装技術・評価の4分類です。要件定義からテスト・保守までの工程、アジャイル開発やDevOps、データ構造とアルゴリズム、SQLインジェクション対策(プレースホルダ)やSBOMなどが入ります。ITパスポートから科目A-1に進む人にとっては、ここが新しく学ぶ範囲になります。
どこまで共通に学べるか:25分類は土台、4分類は新しく、セキュリティは重点
ここからは当サイトの見方です。ITパスポートを学んだ人が科目A-1に進むときは、範囲を3つに分けて考えると計画を立てやすくなります。
共通の25分類は、ITパスポートの語を土台に、科目A-1の用語例にある上の段の語を足していきます。データマネジメントやデータ分析のように語が多く重なる分類は短く、AI技術のように差が大きい分類は長く見積もります。
科目A-1だけの4分類(開発・運用の3分類と、セキュリティ実装技術・評価)は、ゼロから学びます。基本情報技術者試験(FE)のシラバス案 Ver.0.1は開発・運用の3分類を重点にしているので、FEの範囲の学習がこの部分の入口になります。
セキュリティの4分類は、科目A-1の重点分野です。ITパスポートとの差も大きいので、最も時間をかける範囲として見ておくのが現実的です。
出題数で見ると、ITパスポートは120分で100問(1問あたり1.2分)、PD試験の科目A-1は90分で60問(1問あたり1.5分)です。1問あたりの時間は長くなります。出題形式はどちらも多肢選択式(四肢択一)で、全問必須解答です(IPAの検討状況のページにある「新試験制度の概要」の表、2026年10月11日確認)。科目A-1のサンプル問題は公表されていないので、問題の例はまだ分かりません(2026年10月11日確認)。
科目A-1の範囲全体は「科目A-1(共通知識)とは」に、ITパスポートの学習の進め方は「ITパスポートの学習計画」にまとめています。範囲と日付はIPAの発表で変わることがあるので、受験を決める前にIPAの最新の発表で確かめてください。
参考にした資料(6件)
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
残りの3件を開く
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- 情報処理技術者試験及び情報処理安全確保支援士試験の見直しの検討状況について(掲載)(確認)
- 情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 出題範囲等の改定案 Ver.1.0(掲載)(確認)
- 新試験制度のサンプル問題について(掲載)(確認)