PD試験 システム

PD試験(仮称)システム区分 サンプル問3(橋梁点検IoTの方式設計)の解説

プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(仮称)の科目Bサンプル問3を、スマホで解いて確かめられます。どの機器がどの機器と通信できるかを図にして、6つの空欄を2手で絞り込む解き方と、選択肢ごとの根拠を解説します。

PD試験 システム

科目Bサンプル問題 問3

IPA 公表問題

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設問 本文中の[ a ]~[ f ]に入れる字句の組合せはどれか。解答群の中から最も適切なものを選べ。

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F 社は,各種センサー及びカメラロボットの活用によって,橋梁(きょうりょう)の状態の点検・診断を自動化するシステム(以下,本システムという)の開発・実用化を検討している。本システムの概要を図 1 に,本システムの構成要素の仕様・機能を表 1 に示す。

図1 本システムの概要(当サイトで文章に書き換え)

  • 点検・診断対象となる橋梁の各所(橋桁や橋脚)に,センサーノードが固定設置されている。
  • 橋梁の上空を,複数のカメラロボットが飛行している。
  • 橋梁のそばに,点検制御装置を搭載した車がある。カメラロボットと点検制御装置の間,点検制御装置と F 社の診断サーバの間に,無線通信を表す記号が描かれている。
  • 注記 センサーノードと診断サーバ間はモバイル通信で接続されている。
表1 本システムの構成要素の仕様・機能
構成要素仕様・機能
センサーノード・リチウム一次電池で駆動し,橋梁の各所に固定設置する。電池切れ時はセンサーノードを橋梁から回収して電池交換を行う必要がある。
・一つのセンサーノードに,たわみセンサー,振動センサー,温湿度センサー,風向・風力計,塩分濃度センサーなどを搭載している。
・センサーで計測したデータを橋梁情報として,1 時間ごとにモバイル通信で診断サーバに送信する。
カメラロボット・6 個のローターを搭載し,飛行可能時間は約 30 分である。
・GNSS 受信機,高度センサー,全方位近接センサー及びレーザー測距装置を搭載し,それらが計測したデータを飛行情報として,飛行中に点検制御装置に送信する。また,高精細カメラ及び赤外線カメラを搭載し,高精細な静止画を撮影して SD カードに保存することができる。
点検制御装置・モバイル通信を介して診断サーバからダウンロードした点検計画に従って,複数のカメラロボットを自律的に遠隔操縦し,橋梁の撮影を行う。
・点検制御装置を搭載した車を現場に設置して点検を行うことで,様々な場所にある橋梁の点検に対応することができる。
診断サーバ・点検計画の作成,保存を行う。
・橋梁情報及びカメラロボットが収集した画像データを保存する。
・保存されたデータを AI を用いて診断し,診断結果を蓄積する。

F 社は,国や自治体などの顧客から橋梁の点検・診断作業を受託した後,本システムを使用して行う点検・診断作業の手順を次のように定めることにした。

  1. (1) 点検制御装置は点検前に診断サーバから点検計画をダウンロードする。
  2. (2) 点検を開始すると,点検制御装置は点検計画に従い,複数のカメラロボットを遠隔操縦しながら橋梁の高精細画像及び赤外線画像を撮影し,カメラロボットの SD カードに保存する。
  3. (3) 点検中は,カメラロボットから点検制御装置に送信される飛行情報を基に橋梁や他のカメラロボットと接触・衝突をしないよう各カメラロボットを遠隔操縦する。
  4. (4) 点検終了後,カメラロボットから SD カードを取り出し,保存されている画像データを診断サーバにアップロードする。
  5. (5) 診断サーバに蓄積された画像データを基に,高精細画像からはコンクリート面のひび割れの評価を,赤外線画像からはコンクリート内部の剥離などの評価を AI が行う。また,センサーノードからの橋梁情報を加味して,診断書を作成する。
  6. (6) 顧客とともに診断結果を評価し,補修の必要性や工事内容,優先順位の決定などを行う。

F 社でシステムアーキテクチャ設計を担当する G 氏は,点検制御装置が行うカメラロボットの遠隔操縦が特に重要であると考え,風向・風力のデータを利用して安定的に操縦する方法について次のように検討した。

風向・風力のデータはセンサーノードが計測し,診断サーバに送信されるため,当初は,点検制御装置が診断サーバに要求して,保存された橋梁情報を受信して利用する方式を考えた。しかし,診断サーバ上の橋梁情報は[ a ]がないため,カメラロボットの制御には使えないことが想定された。そこで,センサーノードに対し,診断サーバから要求を受信すると,即座に橋梁情報を計測し送信する機能を追加した。これを利用して,[ b ]は[ c ]から要求があると,[ d ]に要求して[ e ]を受信し,それを[ c ]に送信する方式にした。この方式は,[ e ]の[ a ]と[ d ]の[ f ]を両立させる方式である。

設問 本文中の[ a ]~[ f ]に入れる字句の組合せはどれか。解答群の中から最も適切なものを選べ。

  • (一) センサーノード
  • (二) カメラロボット
  • (三) 点検制御装置
  • (四) 診断サーバ
  • (五) 橋梁情報
  • (六) 飛行情報
  • (七) 保守性
  • (八) 信頼性
  • (九) 省電力性
  • (十) 即時性
解答群
答えと選択肢ごとの根拠を見る

正解:キ(a (十)/b (四)/c (三)/d (一)/e (五)/f (九)) IPA 公表の解答例による

  • ア × 誤り 「古いデータ」を「信頼できないデータ」と読んだ

    a (八)/b (二)/c (三)/d (四)/e (五)/f (九)

    診断サーバ上の橋梁情報が制御に使えないのは,1時間ごとにしか届かず古いから。問題は鮮度(即時性)で,信頼性ではない。また,要求を中継するのはカメラロボットではなく,センサーノードに要求を出せる診断サーバ。

  • イ × 誤り 「古いデータ」を「信頼できないデータ」と読んだ

    a (八)/b (三)/c (四)/d (二)/e (六)/f (七)

    aが違う。また,風向・風力のデータ(橋梁情報)を計測するのはセンサーノードで,カメラロボットの飛行情報ではない。要求の向きも逆で,イでは診断サーバが点検制御装置に要求を出すことになるが,制御に風のデータを使いたいのは点検制御装置の側。

  • ウ × 誤り 「古いデータ」を「信頼できないデータ」と読んだ

    a (八)/b (四)/c (三)/d (一)/e (五)/f (九)

    b〜fは正しいが,aが違う。橋梁情報は1時間ごとにしか診断サーバへ送られないので,診断サーバ上のデータは最大で約1時間前のもの。刻々と変わる風を見て飛行を制御するには鮮度が足りない,つまり即時性がない。

  • エ × 誤り 「古いデータ」を「信頼できないデータ」と読んだ

    a (八)/b (四)/c (三)/d (一)/e (六)/f (七)

    aが違う。eも,センサーノードから受信するのは風向・風力を含む橋梁情報で,飛行情報ではない。fの保守性も,下の解説のとおり省電力性が適切。

  • オ × 誤り 機器の役割を取り違えた

    a (十)/b (二)/c (一)/d (四)/e (六)/f (七)

    aは正しいが,カメラロボットは飛行情報を点検制御装置へ送る側で,風のデータを中継する役割はない。センサーノードは診断サーバとだけモバイル通信でつながっており,要求を受けるのも診断サーバから。

  • カ × 誤り 機器の役割を取り違えた

    a (十)/b (二)/c (三)/d (四)/e (六)/f (九)

    aは正しいが,中継役をカメラロボットにしている。風向・風力を計測するのはセンサーノードで,センサーノードに要求できるのは診断サーバだけ。eも橋梁情報が正しい。

  • キ ○ 正しい

    a (十)/b (四)/c (三)/d (一)/e (五)/f (九)

    a:診断サーバの橋梁情報は1時間ごとの送信なので,制御に使うには即時性がない。b〜e:診断サーバ(b)は,点検制御装置(c)から要求があると,センサーノード(d)に要求して橋梁情報(e)を受信し,それを点検制御装置に送る。f:センサーノードはリチウム一次電池で動き,電池切れのたびに回収が必要。要求があったときだけ計測・送信する方式なので,常に高い頻度で送るよりも電池を消費しない。橋梁情報の即時性と,センサーノードの省電力性を両立させている。

  • ク × 誤り 機器の役割を取り違えた

    a (十)/b (四)/c (三)/d (二)/e (五)/f (七)

    a〜cは正しいが,dがカメラロボットになっている。橋梁情報(風向・風力)を計測しているのはセンサーノードで,診断サーバが要求する相手もセンサーノード。fも,電池駆動のセンサーノードに対する工夫なので省電力性が適切。

出典:プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(仮称) 科目B サンプル問題 問3独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(掲載)原文を開く(確認)図1を文章に書き換え,空欄の枠を[ ]で示し,ルビは語全体の読みを( )で補いました。問題文・表・手順・設問・解答群の文言は原文のままです。

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解説

この問題で問われていること:機器の制約を踏まえた方式設計

IPAは出題趣旨で、この問題を「デバイスの制約,通信の即時性などを考慮して,物理空間とデジタル空間をつなぐシステムアーキテクチャを設計する能力」を評価するものとしています。

空欄がa〜fの6つもあり、解答群も6列あるので、最初は身構えます。しかし実際には、どの機器がどの機器と通信できるかさえ押さえれば、6つの空欄はほとんど連動して決まります。

解き方:まず「通信の経路」を描く

表1と図1から、通信の経路を書き出すと次のようになります。

送る側 受ける側 通信の手段と内容
センサーノード 診断サーバ モバイル通信。橋梁情報(風向・風力を含む)を1時間ごとに送信
カメラロボット 点検制御装置 飛行中に飛行情報を送信
診断サーバ 点検制御装置 モバイル通信。点検計画のダウンロード

ポイントは、センサーノードと直接つながっているのは診断サーバだけということです。点検制御装置が風のデータを欲しくても、センサーノードに直接は聞けません。

手順1:b・c・d・eを経路から決める

本文で追加された機能は「センサーノードに対し,診断サーバから要求を受信すると,即座に橋梁情報を計測し送信する」ものです。これを使って風のデータを点検制御装置に届けるには、次の流れしかありません。

点検制御装置(c)が診断サーバ(b)に要求 → 診断サーバがセンサーノード(d)に要求 → 橋梁情報(e)を受信 → 点検制御装置へ送信

解答群でb=診断サーバ(四)、c=点検制御装置(三)、d=センサーノード(一)、e=橋梁情報(五)になっているのは、ウとキの2つだけです。

手順2:aとfを「何と何を両立させたか」で決める

aは、当初の方式がだめだった理由です。診断サーバ上の橋梁情報は1時間ごとにしか更新されません。データが壊れているわけでも欠けているわけでもなく、古いことが問題なので、aは即時性(十)です。

fは、即時性と両立させたいセンサーノードの性質です。表1に、センサーノードは「リチウム一次電池で駆動」し、「電池切れ時はセンサーノードを橋梁から回収して電池交換を行う必要がある」とあります。常に高い頻度で送れば即時性は上がりますが、電池がすぐ切れます。必要なときだけ計測・送信する方式にしたのは、省電力性(九)を保つためです。

aが即時性なのはキ、信頼性なのはウです。答えはキに決まります。

迷いやすい選択肢:信頼性と保守性

aに信頼性(八)を入れたア〜エは、「制御には使えない」という言い方から、データの信頼性を疑った選択肢です。しかし、追加した機能は「要求を受信すると,即座に橋梁情報を計測し送信する」もので、信頼性ではなく鮮度を上げる工夫です。

fに保守性(七)を入れたイ・エ・オ・クも、もっともらしく見えます。電池交換の手間は保守の話だからです。ただ、この方式が直接減らしているのは電池の消費量で、交換の手間が減るのはその結果です。解答群を見ても、a=即時性・d=センサーノードの組合せでfが保守性のものはありません。

カメラロボットを中継役や要求先にしたア・イ・オ・カ・クは、機器の役割を取り違えています。カメラロボットが送るのは飛行情報で、風向・風力は計測しておらず、センサーノードとも通信しません。

時間をかけないコツ:確実な空欄から解答群を絞る

解く時間の目安は6分ほどです(当サイトの推測)。空欄が多い組合せ問題は、一番確実に決まる空欄から解答群を絞るのが鉄則です。この問題では、通信の経路からb〜eが先に決まり、残る候補が2つになります。

表1の仕様は、制約(電池駆動、1時間ごと、飛行時間30分など)を探すつもりで読みます。設計の問題では、仕様の数値や制約が、そのまま空欄の根拠になることが多いからです。

方式設計として読み直す:遅延と要求の回数

この方式には、試験では問われない論点も残っています。

風のデータは、点検制御装置 → 診断サーバ → センサーノード → 診断サーバ → 点検制御装置と、モバイル通信を4回経由して届きます。カメラロボットの飛行可能時間は約30分なので、何秒以内に受け取れれば制御に使えるのかを、非機能要件として決めておく必要があります。

もう1つは要求の回数です。点検のたびに何回センサーノードを呼び出すかで、電池の持ちが変わります。「要求があれば即座に計測」は、要求の回数に上限を設けて初めて省電力になります。

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参考にした資料

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(確認)