PD試験 マネジメント

PD試験(仮称)マネジメント区分 サンプル問1(地域MaaSのデジタル戦略)の解説

プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(仮称)の科目Bサンプル問1を、スマホで解いて確かめられます。6つの文を「方法・提供するもの・目的」の3組に分け、本文の言葉と照らして1つずつ選ぶ解き方と、選択肢ごとの根拠を解説します。

PD試験 マネジメント

科目Bサンプル問題 問1

IPA 公表問題

Z 県は,世界遺産に登録された山岳地帯や海岸景観など,多様な観光資源を有している。県域は広く,公共交通の利便性が低いことから,観光客の多くはマイカーやレンタカーを利用している。その結果,観光シーズンには主要道路や観光地周辺では慢性的な交通渋滞が発生し,観光客の満足度の向上が課題となっていた。県内には観光資源にアクセスできる鉄道やバスなどの複数の交通事業者が存在するが,交通系 IC カードに対応していない交通事業者が多く,乗継ぎのたびに運賃を現金で支払う必要があった。また,観光施設や宿泊施設においてもキャッシュレス決済が十分に普及しておらず,訪日外国人や若年層を中心とした観光客から不満の声が上がっていた。

このような状況を踏まえ,Z 県は交通事業者,観光・宿泊事業者など(以下,事業者という)と連携し,地域 MaaS(Mobility as a Service)を推進する一般社団法人 Y(以下,Y 法人という)を設立した。Y 法人は,観光客の満足度を向上させて,リピーターや口コミを見て来訪する観光客の増加によって地域経済の活性化を目指している。

そのための取組として,Y 法人は,各事業者の既存システムや業務の独立性を維持したまま共通 API(アプリケーションプログラム間で機能やデータを共有する仕組み)で連携させた,鉄道・バス・観光施設の検索,予約,決済のサービスをスマートフォン上のアプリケーションプログラムからワンストップで提供する。また,複数の交通機関や観光施設を QR コードで利用可能なデジタルチケットサービスを構築し,一定期間自由に利用できる割安なデジタルフリーパスも提供することによって,公共交通の利便性を向上することで周遊を促進する。さらに,乗合マイクロバスを利用できるオンデマンド交通,電動モビリティのレンタル,宿泊などを予約する機能を順次追加し,異なる事業者のサービスを横断的に組み合わせて提供する。

このように,Y 法人は,観光客が事前の計画から現地での移動・観光体験・決済までを一つのアプリケーションプログラムで完結させることによって,顧客体験価値を創出する。顧客接点が集約されることで,サービス利用を通じて得られる移動履歴や滞在時間などのデータをより高い精度で分析することができるので,混雑情報の可視化や運行計画の見直しの提案を行うなど,顧客体験価値の向上につなげる。

Y 法人は,Z 県の支援を受けながら,地域 MaaS の取組によって,各事業者に提供する共通 API のサービスの種類を拡大していき,地域経済の持続可能な成長モデルの実現を目指す。

設問 Y 法人が実現させようとしている内容を三つ挙げた組合せはどれか。解答群の中から最も適切なものを選べ。

  • (一) 各事業者のサービスとの相互連携によってワンストップでサービス提供する。
  • (二) 各事業者のサービスを垂直統合することによってワンストップでサービス提供する。
  • (三) 移動・宿泊・観光体験に必要な交通機関や観光施設の業務改革をデジタル技術で最適化する。
  • (四) 予約・移動・観光体験・決済といった一連の顧客接点をデジタル技術でつなぐ。
  • (五) 地域 MaaS によって,各事業者の業務を効率化し,地域経済の持続可能な成長モデルを実現する。
  • (六) 地域 MaaS によって,顧客体験価値を創出し,地域経済の持続可能な成長モデルを実現する。
解答群
答えと選択肢ごとの根拠を見る

正解:エ((一),(四),(六)) IPA 公表の解答例による

  • ア × 誤り Y法人の取組を,事業者の業務の改革・効率化だと考えた

    (一)は正しい。しかし(三)と(五)は,どちらも事業者の業務の側を変える内容。本文でY法人は「各事業者の既存システムや業務の独立性を維持したまま」連携させるとしており,事業者の業務には手を入れない。目指しているのは観光客の満足度と顧客体験価値で,業務の効率化はどこにも書かれていない。

  • イ × 誤り Y法人の取組を,事業者の業務の改革・効率化だと考えた

    (一)と(六)は正しいが,(三)が誤り。Y法人がデジタル技術でつなぐのは,観光客から見た予約・移動・観光体験・決済の流れ((四))で,交通機関や観光施設の業務改革ではない。本文の「業務の独立性を維持したまま」と食い違う。

  • ウ × 誤り 成長モデルの中身を,事業者の業務効率化だと考えた

    (一)と(四)は正しいが,(五)が誤り。本文で地域経済の活性化につながるのは,観光客の満足度の向上と,リピーターや口コミによる来訪者の増加。「顧客体験価値を創出する」と明記されており,(六)が当てはまる。各事業者の業務の効率化は本文にない。

  • エ ○ 正しい

    連携の方法は,各事業者の「既存システムや業務の独立性を維持したまま」共通APIで連携させるものなので相互連携((一))。提供するものは「事前の計画から現地での移動・観光体験・決済までを一つのアプリケーションプログラムで完結」させる,顧客接点のつながり((四))。目的は「顧客体験価値を創出」し,「地域経済の持続可能な成長モデルの実現を目指す」((六))。

  • オ × 誤り ワンストップにするには事業者を統合する必要があると考えた

    3つとも誤り。(二)の垂直統合は,事業者を1つの経営や仕組みの下にまとめること。本文は独立性を維持したまま共通APIでつなぐとしており,逆の方法。(三)と(五)は事業者の業務の側を変える内容で,Y法人の取組の対象ではない。

  • カ × 誤り ワンストップにするには事業者を統合する必要があると考えた

    (六)は正しいが,(二)と(三)が誤り。ワンストップの提供は,各事業者の独立性を保ったまま共通APIでつないで実現する((一))。業務改革((三))ではなく,観光客から見た一連の顧客接点をつなぐ((四))のがY法人の取組。

  • キ × 誤り ワンストップにするには事業者を統合する必要があると考えた

    (四)は正しいが,(二)と(五)が誤り。本文は「既存システムや業務の独立性を維持したまま」連携するとしており,垂直統合ではない。成長モデルにつながる理由は顧客体験価値の創出で,業務の効率化ではない。

  • ク × 誤り ワンストップにするには事業者を統合する必要があると考えた

    (四)と(六)は正しいが,(二)が誤り。ワンストップという結果は同じでも,方法が違う。本文は各事業者の「既存システムや業務の独立性を維持したまま共通 API」で連携させるとしており,(一)の相互連携に当たる。

出典:プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(仮称) 科目B サンプル問題 問1独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(掲載)原文を開く(確認)

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解説

答えはエ:相互連携で、顧客接点をつなぎ、顧客体験価値を生む

正解はエ((一),(四),(六))です。IPAは出題趣旨で、この問題を、複数のサービスをデジタル技術でつなぎ、ワンストップの顧客接点を通じて顧客体験価値を創出するデジタル戦略の企画・推進を題材に、新たな価値の創出を実現する仕組みを企画する能力を評価するものとしています。

6つの文は、2つずつ対になっています。(一)と(二)は「どうやってつなぐか」、(三)と(四)は「何をデジタル技術で変えるか」、(五)と(六)は「何によって成長するか」です。各組から本文に合うほうを1つ選べば、答えは3つに決まります。解答群の8個も、この組み方(2×2×2)どおりに並んでいます。

3つの組を、本文の言葉で1つずつ決める

組 本文に合うもの 決め手になる本文の言葉
つなぎ方 (一)相互連携 「既存システムや業務の独立性を維持したまま共通 API」で連携
変えるもの (四)一連の顧客接点 「事前の計画から現地での移動・観光体験・決済までを一つのアプリケーションプログラムで完結」
成長の源 (六)顧客体験価値の創出 「顧客体験価値を創出する」「地域経済の持続可能な成長モデルの実現を目指す」

つなぎ方の組は、本文の1文で決まります。Y法人は各事業者のシステムや業務を1つにまとめず、独立したまま共通APIでつなぎます。(二)の垂直統合は、事業者を1つの経営や仕組みの下に置くことなので、本文と逆です。

変えるものの組では、主語に注目します。(三)は「交通機関や観光施設の業務改革」で、変える対象は事業者の業務です。(四)は「一連の顧客接点」で、対象は観光客から見た体験の流れです。本文のY法人の取組(検索・予約・決済をアプリから提供、デジタルチケット、フリーパス)は、どれも観光客の側から見た変化で、事業者の業務の中身には触れていません。

成長の源の組は、Y法人の目的の文で決まります。本文の最初のほうに「観光客の満足度を向上させて,リピーターや口コミを見て来訪する観光客の増加によって地域経済の活性化を目指している」とあります。成長の道筋は、観光客の体験がよくなり、来訪が増えることです。(五)の「各事業者の業務を効率化」は、本文のどこにも書かれていません。

間違えやすいところ:「DX=業務の効率化」と読んでしまう

誤答で多くなりそうなのは、(三)や(五)を選ぶものです。デジタル技術の導入を「業務を効率化するもの」と考えていると、どちらも自然な文に見えます。実際、(五)は(六)と後半が同じで、前半の「業務を効率化し」と「顧客体験価値を創出し」だけが違います。

この問題のY法人は、事業者の業務の効率化を目的にしていません。本文の課題は、観光客がマイカーに頼り、乗継ぎのたびに現金で払い、キャッシュレス決済が使えないことでした。困っているのは観光客で、その不満を解くのが取組の中心です。課題の主語が誰かを先に押さえておくと、(三)と(五)は外しやすくなります。

もう1つは、(二)を選ぶものです。「ワンストップでサービス提供する」という結果は(一)と同じなので、方法の違いを読み落とすと区別がつきません。本文の「独立性を維持したまま」は、統合しないことをわざわざ書いた言葉です。

時間をかけないコツ:文の差分だけを読む

解く時間の目安は4分ほどです(当サイトの推測)。本文は長めですが、設問の6つの文を先に読み、対になった2文の違う語句(相互連携/垂直統合、業務改革/顧客接点、業務を効率化/顧客体験価値を創出)だけを本文で探すと、読む量を減らせます。

  1. (一)・(二)は「独立性を維持したまま」の1文で(一)に決まる。解答群は ア〜エ の4つになる。
  2. (五)・(六)は「顧客体験価値を創出する」で(六)に決まる。イ・エ の2つになる。
  3. (三)・(四)は「移動・観光体験・決済までを一つのアプリケーションプログラムで完結」で(四)に決まり、エ が残る。

実務の目で見ると:連携の方式は、参加のしやすさで決まる

地域の交通や観光のように、規模も仕組みもばらばらな事業者を集める取組では、統合の方式を選ぶと、参加の条件がそのまま障壁になります。自社のシステムを捨てて共通の仕組みに乗り換えるよう求めれば、小さな事業者ほど参加できません。本文のY法人が共通APIを選び、「共通 API のサービスの種類を拡大していき」と段階的に広げる計画にしているのは、この参加のしやすさを優先した設計と読めます。

シラバス案(Ver.0.2)の科目Bの項目「1-2. あるべき姿かつ経営戦略と整合するビジネスモデルの策定及びビジネスプロセスの設計」は、デジタル技術を活用した事業戦略を企画するために、ビジネスモデルを策定するスキルを挙げています。「1-3」には、顧客体験(CX)を向上させるために顧客エンゲージメントを活用するスキルが含まれています。この問題は、その2つを「誰の、何を、どう変えるか」の読み取りで問う形になっています。

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