PD試験 マネジメント
PD試験(仮称)マネジメント区分 サンプル問2(インシデント管理の改善)の解説
プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(仮称)の科目Bサンプル問2を、スマホで解いて確かめられます。インシデントの件数の流れを100件・30件・15件の順に追い、どの手順に課題があるかを特定する解き方と、選択肢ごとの根拠を解説します。
PD試験 マネジメント
科目Bサンプル問題 問2
IPA 公表問題
K 社の情報システム部は販売部に販売サービスを提供している。販売サービスの利用者は販売部の部員で,販売サービスは情報システム部が運用する販売システムで実現されている。情報システム部には開発課と運用課がある。開発課は,販売システムの開発と保守を担当している。運用課には,販売システムの運用を担当する運用チームとサービスデスクチーム(以下,SD という)がある。SD の組織は,販売サービスの利用者に対して SPOC(Single Point Of Contact)として機能し,対応窓口の一本化が図られている。利用者が申告したインシデントは,SD で受け付けられる。受け付けた SD の要員は,自らがインシデントの解決担当者となって,インシデントの対応を行う。K 社のインシデント管理プロセスを表 1 に示す。
| 手順 | 活動の内容 |
|---|---|
| 記録・分類 | 解決担当者は,インシデントの内容をインシデント管理ファイルに記録する。インシデントには,一意のインシデント番号を付番し,インシデントをあらかじめ決められたカテゴリに分類する。 |
| 優先度の割当 | 解決担当者は,インシデントに優先度を割り当てる。 |
| 既知の誤り 注1) の調査 | 解決担当者は,問題管理ファイルの中から既知の誤りを調査して回避策を探す。回避策が見つかった場合は,手順“解決”を行う。回避策が見つからなかった場合は,手順“エスカレーション”を行う。 |
| エスカレーション | アプリケーションプログラム(以下,アプリという)に関係する内容は開発課に,それ以外は運用チームにエスカレーションを行う。エスカレーション先では,手順“インシデントの再調査”を行う。 |
| インシデントの再調査 | 開発課又は運用チームの担当者は,問題管理ファイルの中から既知の誤りを調査して回避策を探す。回避策が見つかった場合は,解決担当者に回避策の内容を知らせる。回避策が見つからなかった場合は,表 2 に示す“K 社の問題管理プロセス”の手順“記録・分類”及び手順“調査と診断”を実施する。 |
| 解決 | 手順“エスカレーション”を行わなかった場合,解決担当者は,解決担当者が見つけた回避策を適用してインシデントを解決する。手順“エスカレーション”を行った場合,解決担当者は,開発課又は運用チームから提示された回避策を適用してインシデントを解決する。 |
| 終了 | 解決担当者は,インシデントが解決したことを[ a ]に連絡し,販売サービスが問題なく利用できることを確認する。解決担当者は,インシデント管理ファイルの記録を更新し終了する。 |
注1) 既知の誤りとは,“サービスへの影響を低減若しくは除去する解決方法がある問題”のことで,問題管理ファイルに記録されている。既知の誤りは,回避策とともに,問題管理プロセスの活動として,開発課又は運用チームによって記録される。
| 手順 | 活動の内容 |
|---|---|
| 記録・分類 | 問題ごとに問題番号を付番し,問題の内容を,エスカレーションされたインシデントとひも付けて問題管理ファイルに記録する。 |
| 調査と診断 | 開発課又は運用チームの担当者は,自ら回避策を策定する。 策定した回避策を,インシデント管理の解決担当者に知らせる。 既知の誤りとして問題管理ファイルに記録する。 |
| 解決 | (省略) |
| 終了 | (省略) |
運用課の G 課長は,インシデントの対応の改善に焦点を当てて,インシデント管理プロセス及び問題管理プロセスの活動を月次でレビューしている。前月 SD が受け付けたインシデントを対象として,G 課長が,表 1 及び表 2 の活動を分析したところ,次の事実が分かった。
- SD が受け付けたインシデントは 100 件であった。
- 表 1 の手順“エスカレーション”で,解決担当者が問題管理ファイルから回避策を見つけることができずエスカレーションを行ったものは 30 件であった。全てアプリに関する内容で,エスカレーション先は全て開発課であった。
- 表 1 の手順“インシデントの再調査”で,開発課が問題管理ファイルを検索して回避策を見つけたインシデントが 15 件あった。
G 課長は,開発課が回避策を見つけたインシデントが 15 件であったことに着目し,[ b ]の活動について,改善すべき課題があるか否かを調査することにした。
設問 表 1 中の[ a ],本文中の[ b ]に入れる字句の適切な組合せはどれか。解答群の中から最も適切なものを選べ。
- (一) 開発課又は運用チーム
- (二) 利用者
- (三) 運用課の課長
- (四) 表 1 の手順“既知の誤りの調査”
- (五) 表 1 の手順“エスカレーション”
- (六) 表 2 の手順“調査と診断”
答えと選択肢ごとの根拠を見る
正解:エ(a (二)/b (四)) IPA 公表の解答例による
ア × 誤り 解決の連絡先を,回避策をくれた部署だと考えた
a (一)/b (四)
bは正しいが,aが誤り。開発課又は運用チームは,回避策を解決担当者に知らせる側。手順“終了”では,解決担当者がサービスを問題なく使えるかを確かめるので,連絡する相手はサービスを使う利用者になる。SDは利用者に対するSPOCで,申告を受けた窓口から利用者に結果を返す。
イ × 誤り エスカレーションしたこと自体を問題と見た
a (一)/b (五)
a・bとも誤り。aは利用者に連絡する。bのエスカレーションは,表1のとおりアプリに関する内容を開発課に回しており,30件とも手順どおり。課題は,エスカレーションする前の調査で回避策を見つけられなかったことにある。
ウ × 誤り 開発課の側の活動に課題があると考えた
a (一)/b (六)
a・bとも誤り。aは利用者に連絡する。bの“調査と診断”は,開発課が問題管理ファイルでも回避策を見つけられなかったときに行う手順。着目した15件は,開発課がファイルを検索しただけで回避策が見つかったもので,調査と診断までは進んでいない。
エ ○ 正しい
a (二)/b (四)
aは,SDが利用者のSPOCとして申告を受けているので,解決したことも利用者に連絡し,サービスが問題なく利用できることを確かめる((二))。bは,開発課が同じ問題管理ファイルを検索して15件の回避策を見つけた事実から決まる。ファイルに回避策は記録されていたのに,SDの解決担当者は手順“既知の誤りの調査”で見つけられなかった。調べるべきはこの手順((四))。
オ × 誤り エスカレーションしたこと自体を問題と見た
a (二)/b (五)
aは正しいが,bが誤り。エスカレーションの手順は,アプリに関する内容を開発課に回すという表1の決まりどおりに行われている。15件の回避策は,エスカレーションの前にSDが問題管理ファイルを調べた段階で見つかるはずのものだった。
カ × 誤り 開発課の側の活動に課題があると考えた
a (二)/b (六)
aは正しいが,bが誤り。“調査と診断”は,回避策が問題管理ファイルにないときに開発課が自ら回避策を作る手順。15件はファイルの検索だけで回避策が見つかっており,この手順を通っていない。G課長が着目したのは,ファイルの検索で回避策が見つかった15件のほう。
キ × 誤り 解決の連絡を,組織内の上長への報告と取り違えた
a (三)/b (四)
bは正しいが,aが誤り。手順“終了”の連絡は,販売サービスが問題なく利用できることを確かめるためのもので,相手はサービスの利用者。運用課の課長への連絡は表1の手順にない。G課長は,プロセスの活動を月次でレビューする立場で登場する。
ク × 誤り 解決の連絡を,組織内の上長への報告と取り違えた
a (三)/b (五)
a・bとも誤り。aはサービスの利用者に連絡する。bのエスカレーションは手順どおりに行われており,課題は,その前のSDによる問題管理ファイルの調査にある。
ケ × 誤り 解決の連絡を,組織内の上長への報告と取り違えた
a (三)/b (六)
a・bとも誤り。aはサービスの利用者に連絡する。bの“調査と診断”は回避策がファイルにないときの手順で,着目した15件はファイルの検索で見つかっている。
解説
答えはエ:aは利用者、bはSDの「既知の誤りの調査」
正解はエ(a (二)利用者、b (四)表1の手順“既知の誤りの調査”)です。IPAは出題趣旨で、この問題を、サービスデスクが行うインシデント管理の実務能力と、インシデントの対応記録やエスカレーションの状況を分析して改善すべき課題を発見する能力を評価するものとしています。
aは手順の意味が分かれば決まる空欄、bは本文の件数から推理する空欄です。点差がつくのはbのほうで、30件と15件という2つの数字が何を意味するかを読み取れるかが問われています。
空欄a:解決の連絡は、申告した利用者に返す
手順“終了”の文は「インシデントが解決したことを[ a ]に連絡し,販売サービスが問題なく利用できることを確認する」です。後半で確かめているのは、販売サービスが使えるかどうかなので、連絡する相手はサービスを使う側、つまり利用者です。
本文の冒頭にも手がかりがあります。SDは「販売サービスの利用者に対して SPOC(Single Point Of Contact)として機能」しています。SPOCは利用者にとっての単一の窓口なので、申告を受けたSDが、解決の結果も同じ窓口から利用者に返します。開発課や運用チーム((一))は回避策をSDに知らせる側で、運用課の課長((三))への連絡は表1のどの手順にも出てきません。
aが(二)の候補は、エ・オ・カの3つです。
空欄b:15件は、SDでも見つけられたはずの回避策
bを決めるには、前月の100件がどこで処理されたかを順に追います。
| 段階 | 件数 | 何が起きたか |
|---|---|---|
| SDが受付 | 100件 | 解決担当者が問題管理ファイルを調べる |
| SDが回避策を見つけられず、開発課へエスカレーション | 30件 | 全てアプリに関する内容 |
| 開発課が同じ問題管理ファイルを検索して回避策を発見 | 15件 | 既知の誤りとして記録済みだったもの |
注目するのは3行目です。開発課が見つけた回避策は、開発課が新しく作ったものではなく、問題管理ファイルに既知の誤りとして記録されていたものです。同じファイルは、SDの解決担当者が手順“既知の誤りの調査”で最初に調べています。記録はあったのに、SDの段階では見つからなかった。この食い違いが、G課長が着目した点です。
課題の候補は、SD側の調べ方(検索の方法、キーワード、知識)か、ファイル側の記録の仕方(カテゴリの付け方、記述の分かりやすさ)です。どちらにしても、調査の対象になるのは手順“既知の誤りの調査”の活動になります。bは(四)で、aと合わせて答えはエに決まります。
間違えやすいところ:エスカレーションや開発課の側を疑う
オ(bが“エスカレーション”)を選ぶのは、30件もエスカレーションしたこと自体を問題と見た場合です。しかし表1のエスカレーションは「アプリケーションプログラムに関係する内容は開発課に」と決まっていて、30件は全てアプリに関する内容で、全て開発課に回っています。手順どおりに行われており、この手順の中に誤りはありません。課題は、エスカレーションに進む前の段階にあります。
カ(bが“調査と診断”)を選ぶのは、開発課の側の活動に目を向けた場合です。“調査と診断”は、問題管理ファイルに回避策がないときに、開発課などが自ら回避策を作る手順です。着目した15件はファイルの検索だけで見つかっているので、この手順を通っていません。
時間をかけないコツ:数字の差を先に見る
解く時間の目安は5分ほどです(当サイトの推測)。表1と表2は手順が多く、スマホでは長く感じますが、全部を覚える必要はありません。
- aは手順“終了”の1行と、冒頭のSPOCの説明で決める。候補はエ・オ・カになる。
- bは本文の3つの事実(100件・30件・15件)を先に読み、15件が「同じファイルで見つかった」ことに気づく。
- 表1で、SDが問題管理ファイルを調べる手順を探す(“既知の誤りの調査”)。エに決まる。
表2の“記録・分類”“解決”“終了”は、この設問では使いません。
実務の目で見ると:エスカレーション率を、ナレッジの問題として読む
サービスデスクの運用では、エスカレーションの件数だけを見て「SDの対応力が足りない」と結論しがちです。この問題が示しているのは、エスカレーションの中身を分けて見ると、手を打つ場所が変わるということです。30件のうち15件は、ナレッジ(既知の誤りの記録)がすでにあったのに使えなかったものでした。この15件は、SDの要員を増やすより、記録の書き方や検索の仕組みを直したほうが減らせます。
残りの15件は、本当に新しい問題だった可能性があり、こちらは問題管理で回避策を作り、既知の誤りとして記録する流れに乗ります。シラバス案(Ver.0.2)の科目Bの項目「2-3. サービスの運用品質を確保するために必要な,サービスデスク,インシデント管理,問題管理」も、インシデント管理と問題管理に加えて、活動を監視・測定・分析して評価するスキルを挙げています。月次のレビューで件数の流れを追うG課長の動きは、その分析の例になっています。
参考にした資料
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(確認)