ITパスポート

今のITパスポート試験と新ITパスポートのシラバスの対照:何が増え、何が変わるか

ITパスポート試験の今のシラバス Ver.6.5と、新しい試験のシラバス案 Ver.0.1を読み比べました。3つの系から3つの分野への組み直し、新しく加わる分類、範囲から外れる開発・アルゴリズム、用語例の増減を、当サイトの表にまとめています。

結論:試験の形は同じで、分類の組み方と範囲が変わる

新しいITパスポート試験(新ITパスポート)も、今と同じ120分・100問です。変わるのは中身の組み方で、今の「ストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系」の23の中分類が、「ビジネス・テクノロジ・セキュリティ・倫理」の3分野、26の中分類に組み直されます。シラバス案(Ver.0.1)では、マインド・スタンスとデータマネジメントが新しい中分類として入り、システム開発の工程、アルゴリズムとプログラミング、基礎理論の多くは範囲から外れます。生成AIの語の多くは今のシラバスにもすでにあり、変わるのは置き場所です。

この記事は、IPAが2026年8月31日に掲載したシラバス案 Ver.0.1と、今のシラバス Ver.6.5を当サイトが読み比べた結果です(2026年10月3日確認)。

比べた版:今の Ver.6.5と、シラバス案 Ver.0.1

今のITパスポート 新ITパスポート
シラバス Ver.6.5(2026年1月8日掲載) シラバス案 Ver.0.1(2026年8月31日掲載)
PDF Ver.6.5のPDF Ver.0.1のPDF
掲載ページ 試験要綱・シラバスについて 新試験制度のシラバス案について
書き方 項目ごとに【目標】【説明】と、用語例・活用例 中分類ごとに【内容】1〜2文と、小分類・項目・用語例の表

PDFのファイル名は、今のシラバスがsyllabus_ip_ver6_5.pdf、シラバス案がsyllabus_ip_ver0_1.pdfです。

シラバス案の表紙には、公表時点の検討状況に基づく内容で、変更する可能性があると書かれています。下の対照も Ver.0.1時点のものです。Ver.6.5は、IPAの掲載ページの注記のとおり、下請法を削って中小受託取引適正化法を足した版です。

枠組み:3つの系から3つの分野へ、中分類は23から26へ

項目 今のITパスポート 新ITパスポート
試験時間・出題数 120分・100問 120分・100問
開始 実施中 2027年度春頃の予定
分野の分け方 ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系 ビジネス、テクノロジ、セキュリティ・倫理
大分類・中分類 9の大分類、23の中分類 6の大分類、26の中分類
分野ごとの問題数 総合評価に使う92問のうち、分野別評価はストラテジ系32問、マネジメント系18問、テクノロジ系42問 未発表
合格率 48.6%(令和7年度=2025年4月〜2026年3月の累計。受験者271,352人、合格者132,012人) 未発表(2026年10月3日確認)
セキュリティの置き場所 テクノロジ系の中分類「セキュリティ」1つ セキュリティ・倫理分野の中分類3つ
法務の置き場所 ストラテジ系の中分類「法務」 セキュリティ・倫理分野の中分類4つ(倫理と法規)

今の欄は試験要綱 Ver.5.6と Ver.6.5、新しい欄はIPAの2026年3月31日の検討状況と、出題範囲等の改定案 Ver.1.0(17ページの表)、シラバス案によります。中分類の数は当サイトがPDFの見出しを数えたものです。今のITパスポートの合格率は、IPA「令和7年度「iパス(ITパスポート試験)」の年間応募者数等について」(公開2026年4月21日、2026年10月3日確認)によります。新ITパスポートはまだ実施されていないので、この値は新ITパスポートの難しさの目安にはなりません。最新の数字はITパスポートの早見表にまとめています。

新しい制度では、すべての試験区分の知識を共通の30の中分類で整理し、ITパスポートはそのうち26を使います。使わないのは、大分類「システムの開発・運用」の3つ(システムライフサイクルプロセス、開発・運用の方法論、アルゴリズム・プログラミング)と、セキュリティ実装技術・評価です。改定案の表で、この4つはITパスポートの列に印がありません。シラバス案の大分類の番号が1〜4・6・7と飛んでいるのも、このためです。

マネジメント系という分け方はなくなります。プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査は、ビジネス分野の中分類(5・4・12)に移ります。

新しく加わる中分類:マインド・スタンスとデータマネジメント

マインド・スタンス:用語ではなく「行動例」が並ぶ

中分類7「マインド・スタンス」の小分類「マインド・スタンス」には、ほかの中分類と違い、用語例の代わりに行動例が書かれています。変化への適応、顧客・ユーザーへの共感、反復的なアプローチ、事実に基づく判断など7つの項目に、「〜している」の形の行動が並びます(シラバス案5〜6ページ)。改定案は、ITパスポートでマインド・スタンスを「知識と併せて出題する」と書いています。

アジャイルの扱いも変わります。Ver.6.5では、アジャイルはマネジメント系の項目「開発プロセス・手法」(29ページ)の中の開発手法で、スクラムやスクラムマスターの語が並んでいました。シラバス案では、アジャイルはマインド・スタンスの小分類「アジャイルなふるまい」に移り、用語例は仮説検証、スプリント、ふりかえり、KPT、アジャイルソフトウェア開発宣言などです。スクラムの語はシラバス案にありません。開発の手法としてではなく、仕事の進め方として問われる形です。近い考え方の問題がサンプル問1(項目は反復的なアプローチ)にあり、考え方はアジャイルな進め方にまとめています。

データマネジメント:今のシラバスにはない分類

IPAの新旧対応表は、データマネジメントを「現行試験において該当する分類なし」としています(この表は情報処理技術者試験の全区分に共通する分類どうしの対応で、ITパスポートのシラバスの項目番号とは別です)。Ver.6.5にも「データマネジメント」の語はありません。メタデータは、今は項目「業務分析・データ利活用」のデータの種類の1語です(6ページ)。

シラバス案の中分類8は、データドリブン経営、データガバナンス、DIKWモデル、データ品質管理、メタデータ管理と、生成・保管・処理・活用・廃棄のデータライフサイクルを用語例に挙げています(6ページ)。メタデータは、データの種類の1つから、管理する対象に位置づけが変わりました。サンプル問題の問2・問3はこの中分類から出ています。用語はメタデータとデータガバナンスとデータ品質で整理しています。

AI:語の多くは今もある。変わるのは置き場所

「生成AIが新しく入る」と思われがちですが、Ver.6.5にも、生成AIの活用例、大規模言語モデル(LLM)、プロンプトエンジニアリング、ハルシネーション、ディープフェイク、プロンプトインジェクションの語はあります。2023年8月の Ver.6.2で、生成AIに関する項目と用語例が足されています(Ver.6.5の改訂履歴)。

違いは置き場所です。Ver.6.5では、AIの語がストラテジ系とテクノロジ系の項目に分かれて入っています。シラバス案では、AIを名前に含む中分類が3つ(10「AI 利活用」、18「AI 技術」、27「情報倫理・AI 倫理」)になり、AIだけを扱う中分類は10と18です。

語の例 Ver.6.5の置き場所 シラバス案の置き場所
生成AIの活用例、ハルシネーション、ディープフェイク ストラテジ系の項目「ビジネスシステム」(19ページ) ビジネス分野の中分類10「AI 利活用」と、セキュリティ・倫理分野の中分類27「情報倫理・AI 倫理」。ディープフェイクは中分類23の「AI を悪用した攻撃」にもある
LLM、プロンプトエンジニアリング テクノロジ系の基礎理論の項目「情報に関する理論」(37ページ) 中分類10「AI 利活用」と、テクノロジ分野の中分類18「AI 技術」
プロンプトインジェクション テクノロジ系の項目「情報セキュリティ」(58ページ) 中分類23「情報セキュリティの脅威」

ページは Ver.6.5のPDFに印刷されたページ番号です。シラバス案にあって、Ver.6.5に見つからなかったAIの語の例は、AIエージェント(自律性と人間の関与、ガードレール)、RAG、コンテキスト内学習、トークン、AI事業者ガイドライン、AI基本法、フロンティアAI、AIトランスフォーメーション(AX)、フィジカルAI、AIガバナンスです。攻撃手法にも「AI を悪用した攻撃」の項目ができ、フィッシングやなりすましの巧妙化、マルウェアの亜種の生成が並びます。

生成AIパスポートとの範囲の違いは「生成AIパスポートと新ITパスポートの違い」で比べています。

セキュリティと法規:独立した分野になり、新しい語が入る

セキュリティは、Ver.6.5では項目61〜63の3つでした。シラバス案では、脅威(中分類23)、マネジメント(24)、対策(25)の3つの中分類になり、倫理と法規の4つの中分類と合わせて1つの分野を作ります。各中分類の【内容】は、異常に気付いて報告する、業務で扱う情報資産を安全に管理する、自分も対策に取り組む、という利用者の立場で書かれています。

当サイトが語で検索して比べた結果、シラバス案にあって Ver.6.5に見つからなかった語の例は次のとおりです。

分野(当サイトの整理) シラバス案の語 Ver.6.5での扱い
考え方 ゼロトラスト なし
認証 パスキー パスワードレス認証の語がある
暗号 耐量子計算機暗号(PQC) なし
脅威 リークサイト ダークウェブの語はある
内部統制 3つのラインモデル 内部統制の項目と、内部統制報告制度の語はある
法規 AI基本法、サイバー対処能力強化法 なし

逆に、ビジネスメール詐欺(BEC)、シャドーIT、イミュータブルバックアップ、中小受託取引適正化法は、Ver.6.5にすでにあります。Ver.6.5に合わせた教材なら、これらは今の学習で押さえられます。

範囲から外れるもの:開発の工程、アルゴリズム、基礎理論の多く

Ver.6.5の項目のうち、シラバス案に行き先が見当たらないものを挙げます。

Ver.6.5の項目 シラバス案での扱い
システム開発技術、開発プロセス・手法(マネジメント系) 中分類として見当たらない。要件定義とDFD・UMLは中分類2に残る
データ構造、アルゴリズムとプログラミング、プログラム言語(テクノロジ系) 中分類として見当たらない。アルゴリズム、擬似言語、流れ図の語もない。フローチャートは中分類3に、業務プロセスを図にする方法の1つとして残る
離散数学(2進数、論理演算など)、応用数学 離散数学は見当たらない。応用数学の確率、順列、組合せ、回帰分析は中分類9「データ分析・データ利活用」に残る
ファシリティマネジメント、標準化関連、オープンソースソフトウェア 項目も、ISO・JIS・OSSなどの語もない。標準化の語は、中分類10の項目「AI 政策・標準化の動向」(用語例はAI事業者ガイドライン)にだけある

残る中分類でも、用語例は減っています。データベースでは、主キー、正規化、排他制御、デッドロック、ロールバックは残りますが、外部キー、インデックス、NoSQL、ACID特性はシラバス案にありません。システムの評価では、稼働率は残り、MTBF・MTTRはありません。テクノロジ分野の中分類(13〜19)のうち、14〜18の【内容】には、どれも「デジタル技術に関する円滑な意思疎通」のための知識と書かれています。仕組みを作る側ではなく、話を理解して使う側の知識に絞った、と当サイトは読んでいます。

ただし用語例はあくまで例で、Ver.0.1は案です。確定版で語が戻ることもありえます。

今の教材で新ITパスポートを学ぶときの使い分け(当サイトの見方)

今の教材の章 新ITパスポートでの扱い 学び方
ストラテジ系(経営、会計、マーケティング、法務) ビジネス分野と、倫理・法規の中分類にほぼ移る そのまま使える。AI基本法などの新しい法律を足す
マネジメント系のプロジェクトマネジメント・サービスマネジメント・監査 ビジネス分野に移る そのまま使える
マネジメント系の開発技術 案では範囲外 優先度を下げる。アジャイルは考え方の部分だけ読む
テクノロジ系の基礎理論・アルゴリズム 確率・統計の一部と、AIの技術(情報に関する理論のAIの部分)を除き、案では範囲外 AIの技術は残す。そのほかは優先度を下げる
テクノロジ系のコンピュータ・ネットワーク・データベース 残るが、用語例は少ない 基本の語を中心に
テクノロジ系のセキュリティ 独立した分野になる そのまま使い、上の表の語を足す
(該当する章なし) マインド・スタンス、データマネジメント シラバス案の行動例・用語例と、サンプル問題で足す

今の試験と新しい試験のどちらで受けるかの判断と、週ごとの進め方は「ITパスポートの学習計画」にまとめています。新ITパスポートの次にPD試験やSCを考えている人は、共通知識との重なりを「科目A-1と新ITパスポートの重なり」で見られます。情報セキュリティマネジメント試験との範囲の重なりは「ITパスポートとSGの違い」で比べています。

まだ分からないこと

次の項目は、IPAが未発表です(2026年10月3日確認)。新ITパスポートの具体的な開始日、分野ごとの問題数、合格基準、受験手数料、シラバスの確定版の時期です。今のITパスポートには分野別評価点の基準(各分野300点以上)がありますが、新ITパスポートで分野ごとの基準が設けられるかも書かれていません。

新制度全体の日程は移行ガイドで追っています。

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参考にした資料(9件)

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(確認)

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