PD試験 データ・AI
PD試験(仮称)データ・AI区分 サンプル問4(データ分析基盤の配置)の解説
プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)の科目Bサンプル問4を、スマホで解いて確かめられます。データレイク・DWH・データマートの役割を、図1の矢印の向きと3つの要件から決める手順を解説します。
PD試験 データ・AI
科目Bサンプル問題 問4
IPA 公表問題
住宅設備メーカーのA 社は,設備の製造,販売,保守を行っている。A 社では,様々なデータソースから収集したデータを利活用するためのデータ分析基盤を運用している。今回,設備の利用者(以下,ユーザーという)からの問合せに関するデータ利活用の追加要望があり,データ分析基盤へのデータ追加を検討することにした。
〔データ分析基盤〕
A 社のデータ分析基盤の全体像を図1 に示す。設備,ユーザーなどのマスターデータはDWH 内のテーブルに格納している。
図1 A 社のデータ分析基盤の全体像(当サイトによる書き換え。矢印の向きに沿った流れ)
- 様々なデータソース → データレイク
- データレイク → データプリパレーションツール → データ利活用(BIツール、機械学習)
- データレイク → ETLツール → DWH
- DWH → データ利活用
- DWH → ETLツール → データマート → データ利活用
〔問合せ記録〕
- コールセンターでは,ユーザーから電話又はWeb で受けた設備使用上の不具合や違和感などの問合せを記録している。
- 問合せ記録は,日別にJSON 形式のテキストファイルに保存する。
- 問合せ記録には,一意な問合せ番号,受付日時,問合せ内容,ユーザーID,ユーザーの連絡先,対象設備,点検修理要否などに加えて,通話又はメールによる交信ごとの交信日時,交信内容が含まれる。
〔データ利活用の要件〕
問合せ記録のデータ利活用要件を表1 に示す。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 要件1 | 設備ごとの問合せ傾向,修理への転換率,問題解決時間などの分析に全社で利用したい。利用にあたっては,蓄積した全期間の問合せを対象に,ユーザーの属性(居住地域,家族構成など),設備の属性(モデル,容量など)を軸に汎用的に検索,集計を行って可視化することもあれば,特定の設備を対象に,問合せ内容を照会する場合もある。 |
| 要件2 | 設備保守部門で,一定期間に点検修理を要した問合せを対象に,対象の設備情報(設置場所,設置年月など),設備利用年月数の導出値を切り出して分析に使用したい。 |
| 要件3 | 受付日時,対象設備,問合せ内容を機械学習の対象にすることで,センチメント分析,FAQ の改善を行いたい。 |
〔データ配置の整理〕
データエンジニアのB さんは,問合せ記録のデータ利活用要件を基に,データ分析基盤へのデータ配置を次のように整理した。
- 要件1 について,問合せ記録の詳細に,転換率,問題解決時間などを付加し,軸となるユーザー,設備のデータを[ a ]に配置し,[ b ]のデータをETL ツールで加工して格納する。
- 要件2 について,分析に必要なデータを[ c ]に配置し,[ d ]のデータをETL ツールで加工して格納する。
- 要件3 について,データレイクに格納したデータをデータプリパレーションツールで加工して利用する。
設問 本文中の[ a ]~[ d ]に入れる字句の組合せはどれか。解答群の中から最も適切なものを選べ。
答えと選択肢ごとの根拠を見る
正解:ウ(a DWH/b データレイク/c データマート/d DWH) IPA 公表の解答例による
ア × 誤り 要件2の分析用データを、DWH に置くものと考えた
a DWH/b データレイク/c DWH/d データレイク
a・b は正しい。c・d が誤り。要件2は、設備保守部門が一定期間の点検修理の問合せに絞って使うデータで、利用部門向けにデータを切り出して置く場所はデータマート。図1で、データマートに入るのは、DWH から ETL ツールで加工したデータだけ(データレイクからデータマートへ入る矢印はない)。
イ × 誤り データレイクからデータマートへ直接入れられると考えた
a DWH/b データレイク/c データマート/d データレイク
a・b・c は正しい。d が誤り。図1では、データマートに入る矢印は、DWH から ETL ツールを通るものだけで、データレイクから直接は入らない。要件2の設備情報(設置場所、設置年月など)は、DWH にあるマスターデータで、これと要件1で整備した問合せ記録をもとに加工する。
ウ ○ 正しい
a DWH/b データレイク/c データマート/d DWH
要件1:全期間・全社で、ユーザーや設備を軸に汎用的に検索・集計するデータは、DWH に置く。軸になるユーザー・設備のマスターデータはもともと DWH にあり(a)、問合せ記録のように、図1からデータレイクにあると読み取れる生のデータを、ETL ツールで加工して DWH に格納する(b)。要件2:設備保守部門が使う、一定期間に点検修理を要した問合せだけを切り出したデータは、利用部門向けのデータマートに置く(c)。図1でデータマートに入るのは、DWH から ETL ツールで加工したデータなので、DWH のデータを使う(d)。
エ × 誤り 全社向けの汎用的な集計用のデータを、データマートに置くものと考えた
a データマート/b DWH/c データマート/d DWH
a・b が誤り。要件1は、全期間・全社を対象に、ユーザーや設備の属性を軸に汎用的に検索・集計するデータで、置き場所は DWH。本文にも、ユーザー・設備のマスターデータは DWH 内のテーブルにあると書かれている。b は、DWH のデータを DWH に格納する形になってしまい、問合せ記録を取り込む経路がない。c・d は正しい。
オ × 誤り データマートと DWH の役割を逆に考えた
a データマート/b DWH/c DWH/d データレイク
a・b・c・d のすべてが誤り。要件1の全社向けの汎用的なデータは DWH、要件2の部門向けに切り出したデータはデータマートが置き場所で、役割が逆になっている。データレイクの生データを加工して DWH に格納する流れ(b がデータレイク)も合わない。
カ × 誤り データマートと DWH の役割を逆に考えた
a データマート/b データレイク/c DWH/d データレイク
a・c・d が誤り。要件1の全社向けの汎用的なデータは DWH に置く。要件2の、部門向けに切り出したデータはデータマート。a と c に、データマートと DWH が逆に入っている。d も、データマートにデータレイクから直接入る矢印が図1にないので合わない。b は正しい。
キ × 誤り 全社向けの汎用的な集計用のデータを、データマートに置くものと考えた
a データマート/b データレイク/c データマート/d DWH
a が誤り。要件1は、全期間・全社を対象に、ユーザーや設備の属性を軸に汎用的に検索・集計するので、DWH が置き場所。軸になるマスターデータは、もともと DWH 内のテーブルに格納されていると本文にある。b・c・d は正しい。
ク × 誤り データマートにデータレイクから直接入れられると考えた
a データマート/b データレイク/c データマート/d データレイク
a・d が誤り。a は、要件1の全社向けの汎用的なデータなので DWH。d は、データマートに入る矢印が図1ではDWH から ETL ツールを通るものだけで、データレイクから直接は入らない。b・c は正しい。
解説
答えはウ:DWH、データレイク、データマート、DWH
正解はウ(aがDWH、bがデータレイク、cがデータマート、dがDWH)です。IPAは出題趣旨で、この問題を、データ分析基盤の構築を題材に、データレイク・DWH・データマートの役割と、データの加工・保存の方法を問うものとしています。
4つの空欄は、要件1の2つ(a・b)と、要件2の2つ(c・d)です。どの空欄も、図1の矢印の向きと、要件の使い方の文から決まります。
図1の矢印を、先に読む
図1の流れを順に書くと、次のようになります。
- データソースのデータは、まずデータレイクに入る。
- データレイクからは、2つの道がある。1つは、データプリパレーションツールを通って、データ利活用(BIツール・機械学習)へ行く道。もう1つは、ETLツールを通って、DWHへ入る道。
- DWHからは、データ利活用へ直接行く道と、ETLツールを通ってデータマートに入る道がある。
- データマートからも、データ利活用へ行く。
確かめることは2つです。DWHに入るデータは、データレイクからETLツールを通ったものです。データマートに入るデータは、DWHからETLツールを通ったものだけで、データレイクから直接は入りません。
要件1:全社・全期間の汎用的な分析は、DWHに置く
要件1は、全期間の問合せを対象に、ユーザーや設備の属性を軸に汎用的に検索・集計するものです。全社で共通に使うデータは、DWHの役割です。軸になるユーザーと設備のマスターデータは、もともとDWHのテーブルにあると本文に書かれています。したがってaはDWHです。問合せ記録は、日別のJSON形式のファイルとして保存されています。図1で、DWHに入るデータはデータレイクからETLツールを通ったものなので、bはデータレイクです(図からの推論)。
要件2:部門向けに切り出すデータは、データマートに置く
要件2は、設備保守部門が、一定期間に点検修理を要した問合せだけを切り出して使うものです。特定の部門や目的のために、必要な範囲に絞って置く場所が、データマートです(c)。図1でデータマートに入るのは、DWHからETLツールで加工したデータなので、設備情報や、要件1で整備した問合せ記録を持つDWHが元になります(d)。
間違えやすいところ:データレイクから直接データマートに入れてしまう
ア・イ・オ・カ・クは、dにデータレイクを入れています。データレイクにあるデータを加工して、直接データマートに入れる形です。図1には、その矢印がありません。図に従えば外せます。
エ・オ・カ・キ・クは、aにデータマートを入れています。要件1は全社向けの汎用的な利用なので、特定の部門向けに絞るデータマートではなく、DWHに置きます。
時間をかけないコツ:aとcから決める
解く時間の目安は4分ほどです(当サイトの推測)。aはDWHかデータマートの2択で、DWHに決まり、解答群はア・イ・ウの3つに絞られます。cがデータマートなので、イとウが残ります。最後にdを、図1の矢印から、DWHと決めます。
実務の目で見ると:置き場所は「誰が・どの範囲で使うか」で決まる
データレイクは、生のデータをそのまま置いておく場所で、使い道が決まっていないデータの置き場として使います。DWHは、整理して統合したデータを、全社で共通に分析するための場所です。データマートは、特定の部門や用途に必要な範囲を切り出して、使いやすい形にしておく場所です。この問題の設計は、同じ問合せ記録を、使い方の広さ(全社か部門か)で別々の場所に置き分けるものです。
シラバス案(Ver.0.1)の科目Bの項目「3-4」には、データレイクやDWHなどに集約した統合型のデータ基盤を構築するスキルが含まれています。この問題は、そのうちの、各構成要素の役割とデータの流れを読み取る部分を問う形になっています。
この解説について
問題と解答例はIPAの公表物です。選択肢ごとの根拠と解き方は、当サイトが書いた解説で、IPAの公式な解説ではありません(IPAは解説を公表していません)。出典は、IPAの「プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)科目Bのサンプル問題」(2026年10月30日掲載)です。問題文は出典を明記して、教育目的で載せています。IPAによると、サンプル問題は新しい出題分野と形式のイメージを共有するためのもので、実際の試験と同様の問題作成やチェックのプロセスを経たものではありません。図1は、矢印の向きを文章に書き換えて載せています。
参考にした資料
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(確認)